information

日時:2023年12月31日(日)10:30~
場所:日本キリスト教団代々木教会礼拝堂

<導入>
◆新型コロナウィルス感染症の発生は2019年12月初旬。4年が経過しました。
第一例目の感染者が武漢で報告されてからわずか数ヶ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となりました。
ダイアモンド・クルーズ船の惨事や、志村けんさん・岡江久美子さんが感染して亡くなったニュース等から、私たちは3年に亘り、これまでの常識では到底考えられないような出来事に触れました。
・クラスター感染の脅威や、リモートワークという新しいワークスタイル。
・行政からのステイホームのかけ声、ヒステリックな自粛警察。
・それでも無観客で行われた東京五輪。
・すごいスピードで開発されたコロナワクチン。
・デルタ~オミクロンと続いた変異株の、最初と違う症状。
◆今、第9波のなかにあるということですが、ワクチンの普及とコロナ治療薬の処方によって、高齢者のかたも、基礎疾患のあるかたも、重い症状や致命的に至ることが減っている、ということです。
◆私自身の体験をお話します。
・夕方に渋谷の街中に出ますと、酒を出す居酒屋が閉店しているので、街中で缶ビールやチューハイを飲んでいる若者たちが暗い道端にたむろしていたのを覚えています。
・運動不足だった私は、渋谷区スポーツセンターにマシントレーニングに行ったときのことを思い出します。スポーツとは、そもそも酸素を吸入する、呼吸することが必要ものなのに、ランニングマシンで少しマスクから鼻が出ているだけで指導員から注意を受けました。そしてマシンを使う度に、触った箇所を消毒する手間。
◆とまれ、私たちそれぞれのコロナの経験は、未来のパンデミックのためにも教訓とし、行政も国政も、やって良かったことや悪かったことを評価しなければなりません。
そして、私たちは生涯忘れることなく、折に触れて思い出すことが大切と思います。
◆しかし、実際には、覚え続けることは、難しいかもしれません。
例えば、いまから100年前に起きたパンデミックのスペイン風邪は人々の記憶からほぼ忘れ去れていました。
「スペイン風邪」は1918年から1920年にかけて、当時の「新型インフルエンザ・ウィルス」によって全世界的に引き起こされた疾病です。
これによる死亡者数は、世界全体で2,000万人から4,500万人、日本では38万人から45万人と推計されています。当時の世界と日本の人口は、それぞれ約20億人と約5,500万人でしたから、いかに被害が大きかったかを知ることができます。
また、このころ継続中であった第1次世界大戦の総死者数が全世界で約1,000万人といわれていますので、それよりもはるかに大規模な災害といえます。
◆なぜ日本ではスペイン風邪は忘れ去られたか。他にインパクトの大きい出来事があったことは関係がありそうです。この期間が、第一次世界大戦の戦時中であったことと、しばらく後の1923に起きた関東大震災という非常に劇的なことが起きたからです。
感染症の流行はドラマチックな出来事ではないので、小説にもほとんど取り上げられませんでした。菊池寛が自身が病弱で感染予防にマスクをしていたことがきっかけで『マスク』という自伝的な短編小説を書いているくらいです。それぐらいしか小説には残されていません。
スペイン風邪と同じように、新型コロナも忘れ去られてしまうのでしょうか。
もし近い将来に、富士山の噴火や、南海トラフ地震が起きたら。台湾で戦争が始まったら。
本当に忘却の彼方になってしまうかもしれません。
◆この季節に、わたしたちが祝うクリスマスも、これまでの常識では到底考えられないような出来事でした。
しかしそれは起こり、こうして歴史の中で綿々と語り継がれ、受け継がれ、祝い続けられている。それがクリスマスです。
・夏の盆踊りと花火、秋祭り、ハロウィン、そしてクリスマス。日本人の行事に完全に組み込まれています。
・しかし、こちらは祝いっぱなしにして次の年のクリスマスまで忘れてしまう、という超短期記憶のような扱いが日本一般ではなされます。
・なぜならクリスマスに続く師走の忙しさ、そして、正月が待っているからです。
◆しかし、すくなくとも教会は、そうであってはならないのです。