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要約:

第1講「釈迦の仏教」から大乗仏教へ

〇大乗仏教はお釈迦様直伝の教えではない?

・上座部仏教、いわゆる小乗仏教こそが、オリジナルの仏教である釈迦の仏教の内容である。
・出家修行を最重要視する。
・サンガという修行者集団に参加し、瞑想を中心とした修行生活を送る。
・生活の必要品はすべてサンガに属さない在家信者(優婆塞)から貰って賄う(布施を受ける)。
・在家信者は、修行者に布施することによって、良い結果を受け取る。
・人間は、六道(天、人、阿修羅、後に加わった)、畜生、餓鬼、地獄)を輪廻している。輪廻の原動は、「業=活動」のエネルギー。そのエネルギーの元は煩悩。修行によって、この煩悩を断ち切り、涅槃に達する。

〇外部の不思議な力を拠り所と考えた大乗仏教

・涅槃に至るのに、種々の仏(如来。経典の作者によって創り上げられた)の力に頼ろうとする。
・在家のままでも、仏を信じること、あるいは経典に頼る(読誦あるいは写経) によって悟りの道を歩むことができる。

〇釈迦について

・本名はゴータマ・シーダッタ(中村元説では、前463~383、南伝仏教によると、前 624~544)。ネパールのルンビニ村の、釈迦族の王子。29歳で出家(生老病死の四苦(=一切皆空)を解決するため四門出遊し、35歳で悟りを開き、80歳まで弟子たちと(サンガを形成して)共に各地を旅しながら人々に教えを説いて回る。
・釈迦が逝去したとき、弟子アーナンダが集まった5百人の弟子の前で生前に聞いた釈迦の言葉を口に出して唱え、それをみんなで一斉に記憶したという。文書化されたのは、その数百年後。
・釈迦の遺骨を入れた舎利容器を治める塔を創る。アショーカ王の時、釈迦の墓を開いて、遺骨を取り出し、砕いた砕片を舎利容器に入れ、それを祭る塔(卒塔婆⇒日本の寺の塔)を各地に造る。

〇釈迦の仏教

・瞑想修行を重ねて、悟りを開き、二度と生まれ変わることのない涅槃に辿りつく(輪廻からの脱出をする)こと。一切皆空・諸行無常・諸法無我⇒涅槃寂静

〇部派仏教

・アショーカ王の時代に「破僧の定義変更。「魔訶僧祇律」という書物が残っている」が行われた。サンガの中にいる限り、仏教の教えの中にいろんな解釈があっても良いとする。20ほどの部派ができた。決定的な要因は、「理に適っていさえすれば、それは釈迦の教えと考えて良い」というアイデアが登場した。
・釈迦の仏教では、普通の人の出家後の目標は阿羅漢になること。大乗仏教では、最終到達点は「ブッダ」になること=成仏である。釈迦の仏教の時代に書かれた『燃灯仏(ディーバンカラ) 授記』には、輪廻の中の前世において釈迦が凡夫であったとき、燃灯仏が釈迦に会い、「あなたは仏になるだろう」と予言した。それで釈迦は、菩薩となり、この世に生まれて、出家し、悟りを開いて仏(ブッダ)となった。

〇大乗仏教の登場

・ブッダを崇め、供養することがブッダになるための近道である、と考える。様々なアイデアを練り、それに従って、次々に大乗経典が書かれることになる。

第2講「空」の思想が広がった - 般若経

〇般若経典(紀元前後)

・ 『般若心経』、『金剛般若経』、『般若理趣経』、『大般若経(全600 巻)』、『八千般若経』。
・禅宗(曹洞宗、臨済宗、黄檗宗)および密教系(天台宗、真言宗)が奉じている。
・主旨-すべての人は過去においてブッダと会って、ブッダになるよう努力するという誓いを立てているので、日常の生活で善行を積み重ねていけば、悟りに近づくことができる、と教える。本来は、輪廻を繰り返すことにしか役立たない業のエネルギーを、悟りを開いてブッダになることに転用すること(=回向)が可能と、捉え直した。

〇回向へと向かう修行

・六波羅蜜=布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧。中でも大事なものが「般若波羅密多=完全な智慧の完成」と呼ばれる智慧の修行。これにより「空」が分かる。さらにもう一つ効果のある修行は、『般若経』を讃えること。お経を仏陀と捉える。従って、お経を読む、唱える、写すことは、ブッダに会うことを意味する。三仏乗:声聞乗・独覚乗・菩薩乗があり。もっとも優れているのが菩薩乗。

第3講 久遠のブッダ - 「法華経」

〇『法華経』

・諸訳ある中で鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』が普及。サッダルマ・プンダリーカ・スートラ=正しい教えという白蓮華を説く経典。28品。
・重要な教えの個所は第二章『方便品』。ここでは「一仏乗」が説かれている。釈迦の仏教で説かれていた「初転法輪」において話した「衆生は阿羅漢を目指すべきだ」と云うのは、方便で言ったので、菩薩としてブッダを目指すのが正しい道である。
・譬えで説明:法華七喩-三車火宅の喩、長者窮子の瞼、三草一木の喩、化城宝処の喩、衣裏繋珠の喩、誓中明珠の喩、良医治子の喩。
・「如来寿量品」には「久遠実成」という教えがある。ブッダは死んでいないで、常に存在している。(法華経の前半では、ブッダは死んだことになっているが、後半で、常住と説かれている。)

〇常不軽菩薩の登場。

・ブッダ信仰⇒法華経信仰—→南無法蓮華経。

〇江戸時代の町学者の富永仲基(1715~1746) の指摘。著書『出上後語』には、 大乗非仏説と加上説「すべての思想や宗教は前にあったものを超えようとして上乗せしながら作られた」と説明する。

第4講 阿弥陀の力 - 浄土教

〇浄土教関連の経典

  1.  『無量寿経』
  2. 『観無量寿経』
  3. 『阿弥陀経』

1と3は紀元1世紀ころ、インドで成立。2は中国で制作された。釈迦如来よりも、阿弥陀仏の方が重んじられている。

・浄土教のベース:「阿閲仏国経」

第5講 宇宙の心理を照らす仏 - 『華厳経』密教

・悟り⇒救いと考える。目的が悟りから、救われることへと変わった!

〇『華厳経』密教

・『華厳経』(紀元3世紀ごろ中央アジアで制作された)の象徴:奈良の大仏(盧舎那仏座像)
〇経の基本部分
・一つは「十地品」:「歓喜地」、離垢地、発光地、焔慧地、難勝地、現前地、遠行地、不動地、善慧地、法雲地。
・もう一つは、「入法界品」、 善財法師の求道の旅物語。
・6世紀半ばに日本に伝えられた仏教は、南都八宗:三論宗、成実宗、法相宗、倶舎宗、律宗となる。
・これらの大元締めは、三論宗を掲げる東大寺。建立の目的は鎮護国家。

〇密教(特に、真言密教)

・根本経典:『大日経』、『金剛頂経』、『般若理趣経』。最重要仏:大日如来。
・教え:即身成仏(生きたまま仏の境地に至ること)。方法:三密(身密、口密、意密)加持の業。
・仏の世界の表現は、胎蔵界曼荼羅と金剛界曼荼羅。

第6講 大乗仏教はどこに向かうのか

〇大乗『涅槃経』 「一切衆生悉有仏性」、すなわち、すべての人は生まれながらに「仏性」を持っている、と言う考え方。仏性とはブッダの性質で、たぶん、自由な心と理解してよさそう。

〇座禅 曹洞宗(只管打坐)、臨済宗(公案)
・座禅とは、信仰ではなく、修行であると考えられる。
・仏教の本来の姿のサンガや律を残す。

〇律を取り入れなかった日本の仏教

〇鈴木大拙(1870~1966)『日本的霊性』。大抵の著作全体を「大拙大乗経」と呼んでも良い。

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